特定技能の外国人、最大約80万人受け入れ予定

特定技能の外国人、最大約80万人受け入れ予定

2024年3月4日、在留資格「特定技能」による外国人材の受け入れに関して、政府は2024年度から5年間で最大約80万人の受け入れを計画していることが明らかになりました。特定技能の創設初年度(2019年)から5年間の受け入れ目標より2倍以上の規模であり、日本が直面する深刻な人手不足に対して外国人材のニーズが一層高まっています。

受け入れ拡大の背景

少子高齢化が進む日本では、様々な産業で人材の確保が困難な状況です。厚生労働省の『新たな在留資格「特定技能」について(2019年)』よると、2019年時点、有効求人倍率は1970年代以来の高さとなり、失業率は25年ぶりの水準まで低下しました。さらに、労働参加率は人口減少下にもかかわらず、就業者は251万人増加しています。しかし、企業の人手不足感は、バブル期以来の水準にまで強まっています。特に製造、建設、農業、介護業界などでは人手不足問題が顕著に現れており、国内の労働力だけでは賄うことが難しい事態です。

このような背景から、特定技能制度を導入し、外国人労働者の積極的な受け入れを始めました。人手不足が深刻な業界を支援し、日本経済に活力をもたらすための重要な取り組みになっています。

特定技能の概要

特定技能とは、2019年に導入された新しい在留資格です。特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、12の特定産業分野に指定されています。

特定技能1号と2号の違い

特定技能1号

特定産業分野に属する相当程度の知識、または経験を必要とする技能が必要な業務に従事する外国人向けの在留資格です。受け入れ機関または登録支援機関による支援の対象となっています。詳細は、外務省「在留資格 特定技能 制度の概要」から確認してください。

在留期間 1年・6ヵ月・4ヵ月ごとの更新(通算5年まで)
技能水準 試験等で確認 (技能実習2号修了者は試験等免除)
日本語能力水準 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認
(技能実習2号修了者は試験等免除)
家族の帯同 基本的に認めない

特定技能2号

「特定技能2号」は特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。受け入れ機関または登録支援機関による支援の対象外なので注意が必要です。

在留期間3年・1年・6ヵ月ごとの更新
技能水準 試験等で確認 
日本語能力水準 試験等での確認は不要
家族の帯同 要件を満たせば可能(配偶者、子)

対象となる分野

現在、「特定技能」によって従事可能な業務は、12の特定産業分野で次のとおり定められています。1号は12分野、2号は11分野(介護を除く)です。

介護 身体介護等
ビルクリーニング 建築物内部の清掃
素形材産業産業機械製造業、
電気・電子情報関連産業
鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プラスチック成形、溶接など
建設 型枠施工、土工、内装仕上げ/表装、左官、屋根ふき、電気通信、トンネル推進工、鉄筋施工、建設機械施工など
造船・舶用工業 溶接、仕上げ、塗装、機械加工、鉄工、電気機器組立て
自動車整備 自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備
航空 空港グランドハンドリング、航空機整備
宿泊 フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供
農業 耕種農業全般、畜産農業全般
漁業 漁業、養殖業
飲食料品製造業 飲食料品製造業全般
外食業 外食業全般

既存の分野に加え、政府は新たに「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野の追加を検討しています。

社会的影響

特定技能の外国人受け入れ拡大によって、日本経済の活性化が挙げられます。現在、特定技能を含む外国人労働者は増加傾向にあり、全外国人労働者は200万人を超え、特定技能の外国人はその内約20万人を占めています。専門性や技能を有する人材の流入によって各業界で即戦力としての活躍が期待できます。また、国内消費の増加を促し、経済全体の好循環を生み出す効果が期待されます。

一方、特定技能の外国人が日本での生活をしやすくなるような支援体制を整えることも求められています。日本語研修、日本の文化や慣習理解の促進など生活支援が欠かせません。企業による1 on 1 ミーティングの実施や専任の教育担当者の設置などのサポートを強化することでコミュニケーション不足を解消できます。また、企業や自治体が地域住民との交流の場を設けることで、地域コミュニティと外国人の溝を埋める手段となり得ます。政府だけでなく、受け入れ企業や地域社会が一丸となって外国人が安心して生活できる環境作りに取り組むことが重要です。

まとめ

政府は日本の慢性的な人材不足を解消するため、これまで以上に外国人材を求めています。今後5年間で約80万人の特定技能外国人の受け入れ拡大は、介護や農業、建設、製造などの業界が直面する深刻な人手不足を緩和し、日本経済を活性化させる重要な施策です。外国人が生活しやすい環境を整備することで、日本で暮らすハードルが下がり、外国人労働者にとって魅力的な国になります。

今後も特定技能に関する最新情報を提供しますので、ぜひご注目ください。