2024年2月5日、政府は技能実習制度の後継として提案された「育成就労制度(仮称)」に関する方針案を自由民主党の委員会に提示しました。この方針案には、技能実習生の転職制約を緩和する内容が含まれています。本記事では、政府から提案された実習生の転職制約緩和に関する現状をお伝えいたします。
実習生の転職が可能に
現行の技能実習制度では、著しい人権侵害が発生した場合などを除き、転職は原則認められていません。しかし、新制度では技能実習生が業種に応じて1年から2年の就労後、本人の意向による転職が可能となります。
育成就労では、3年の就労期間を通じて技能レベルを「特定技能1号」の水準まで引き上げることが目標とされています。この目標を達成することで「特定技能2号」への移行対象となり、これに伴い在留資格の更新、家族の帯同、さらに条件を満たした場合は永住権の申請も可能になります。
転職制限の緩和については、地方の事業者から人材の流出を懸念する声や、自由民主党内部から現状維持を望む反対意見が存在しました。しかし、政府はこれらの懸念に配慮し、転職制限の期間を業種に応じて柔軟に設定する方針を採り、結果的に自由民主党の了解を得ることができました。
柔軟な労働市場への一歩
日本は、外国人労働者に対する転職制限が国際的に見ても厳しい国の一つとされています。特に、技能実習生として来日する外国人は、厳格な就労環境とルールの下で生活を余儀なくされていました。しかし、政府による今回の転職制限緩和の方針案は、これまでの厳しい枠組みを見直し、より柔軟な労働市場への適応を目指す試みと言えます。
外国人労働者の人権を考慮した転職制限の緩和は、国際社会における人権保護の大きな流れに即しています。技能実習生が適切な環境で働き、その技能を活かしキャリアを構築できる制度整備は、人手不足が深刻化する日本において、人材確保の面での利益にも繋がります。さらに、労働条件と労働環境の改善は、国際社会における日本の地位向上にも寄与します。
海外における転職制限
技能実習制度の本来の目的は、人材育成を通じた国際貢献にありますが、この制度は長年にわたり労働者の権利侵害という問題に直面してきました。技能実習生から報告される劣悪な労働環境や人権侵害の事例は、制度に根本的な欠陥があることを示唆しています。特に、技能実習生が直面する言語の障壁や情報不足は、これらの問題をさらに悪化させています。
一方、アメリカにおける外国人労働者の転職は、市民・移民局(USCIS)の許可が必要であり、ビザの種類によっては転職に際して一定の制約が伴います。例えば、特定の就労ビザ(H-1Bなど)は雇用主に紐づいており、新しい職場への転職を希望する場合、新たなビザ申請や既存のビザの移行手続きが必要になる場合があります。
台湾やシンガポールでは、外国人労働者の転職は原則として許可されていないケースが多いです。しかし、雇用主と労働者本人との間で合意があれば、例外的に転職が認められることもあります。これには、雇用条件、労働ビザの要件など、満たすべきいくつかの条件が伴います。
新制度で期待されること
技能実習制度の本来の目的は、人材育成を通じた国際貢献です。しかし、この制度は長年にわたり、労働者の権利侵害の問題に直面してきました。特に、技能実習生が直面する言語の障壁や情報不足は、これらの問題をさらに悪化させています。
入管庁によると、2022年には9,000人を超える技能実習生が失踪したと報告されています。劣悪な労働環境や人権侵害から逃れることが、失踪の大きな理由として挙げられています。
そこで新制度では、特定技能への移行を目指す実習生に対して、日本語能力試験(JLPT)の要件を設けて、より高いレベルの日本語能力を要求します。この要件は、技能実習生の日本における生活と労働環境への適応を促進します。
また、当面の間は公的な監理支援機関やハローワークが主に転職の斡旋を実施し、民間事業者の関与を認めないこととしました。これにより転職の仲介における悪質なブローカーの排除が期待されます。
まとめ
現在、日本の労働市場は深刻な人材不足に直面しています。外国人労働者の権利保護やクリーンな労働環境の構築は、日本が国際社会で競争力を維持するためにも重要です。今回の政府による転職制限緩和の提案は、日本が人権を尊重する国家であることを示す重要な第一歩と言えます。
外国人労働者がより公正な扱いを受け、自らのキャリアを自由に築ける環境が整うことで、日本は「選ばれる国」としての魅力を高められます。今後も育成就労に関する最新情報を提供していきますので、ぜひ注目してください。