外国人技能実習の新制度「育成就労」関連法案が閣議決定|人手不足解消へ向けた取り組み強化

外国人技能実習の新制度「育成就労」関連法案が閣議決定|人手不足解消へ向けた取り組み強化

3月15日に、出入国管理及び難民認定法などの改正案が閣議決定されました。この改正案には、外国人技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労」制度を創設することが提案されています。この新制度では、外国人労働者が3年間で一定の技能水準に達することを目標に設定し、その達成後には在留資格「特定技能」への移行を通じて、長期的な就労を促進する計画です。

政府は、この改正案を現行の国会期間中に成立させることを目指しています。この取り組みは、国内における労働力不足が深刻化している状況の中、特に建設、介護、農業などの分野での外国人労働者の確保と育成が急務であるという背景に基づいています。

育成就労について詳しい内容を知りたい人は以下の記事を参照してください。

育成就労とは

育成就労制度の導入背景には、多くの国が高度な人材の確保に注力している中、日本も就労環境の改善を進め、即戦力となりうる外国人材の積極的な受け入れを通じて、国際競争に対応しようとする意図があります。この制度により、外国人労働者は3年の育成期間を経て、最長5年間の雇用が可能な「特定技能1号」の資格取得を目指します。

加えて、現行の技能実習制度では実習生本人の意向による転職が原則禁止されていましたが、改正案が実施されると、育成就労制度下では受け入れ企業で1~2年勤務した後、同一業種内での転職が可能になる見込みです。

さらに、より高度な技能が求められる特定技能2号の取得を目指す外国人労働者に対しては、事実上の無期限滞在や家族の帯同が可能になるというメリットを提供します。高度な技術を持つ人材に対し日本での長期的な就労を促進する措置です。このような高度人材の獲得は、日本にとって少子高齢化による労働力不足の解消や国際競争力の強化に寄与します。

育成就労の成功を確実なものとするために、受け入れ企業には「育成就労計画」の作成が求められます。育成就労計画には具体的な業務内容や日本語能力の向上目標などが定められ、外国人労働者のスムーズな職場への適応と能力開発を支援します。これにより、外国人労働者が健全な就労環境で能力を発揮し、自身のキャリアアップを図れるような体制整備が期待されます。

育成就労の対象分野

育成就労制度は、外国人労働者の日本における長期的なキャリア形成を支援する目的で、受け入れ分野を特定技能と一致させることにより、技能実習から特定技能へのスムーズな移行を可能とします。

特定技能1号の対象となる分野には、建設業、農業、宿泊業など12分野が含まれています。これらの分野は、日本の労働市場において人手不足が特に顕著であり、外国人労働者の貢献が期待されています。さらに、政府は運送業など4分野を新たに追加する方針を示しており、多くの分野で外国人労働者の活躍が見込まれます。

育成就労における規定

改正案には、外国人材の長期滞在を視野に入れた重要な規定が含まれています。特に永住者が故意に税金や社会保険料を納付しなかった場合、永住許可の取り消しが可能となる新たな条項が設けられています。この規定は、永住を望む外国人に対し、日本国内での義務遵守の重要性を強調し、公正な社会の促進を目的としています。

また、外国人実習生の転職をめぐり、不法就労を促す業者が多く存在し、社会問題となっている現状があります。この問題に対処するため、政府は不法就労を行う業者に対して厳しい罰則を適用し、不法就労助長罪の法定刑を「5年以下の拘禁または500万円以下の罰金」に設定することで、不正行為に対する抑止力を高め、実習生の権利保護を強化します。さらに、外国人の受け入れや勤務先の監督を行う監理団体には、外部監査人の設置が義務付けられます。

まとめ

育成就労をめぐる改正法が今国会で成立すると、新制度のスタートは2027年となる見込みです。この法改正は、日本が外国人労働者をより公平かつ効果的に受け入れ、長期的に日本社会に貢献できる環境を整備する上で重要です。育成就労制度への移行にあたり、育成就労制度の開始以前から既に日本に来ている技能実習生は、所定の期間が終わるまでは在留が認められるという経過措置が講じられます。これにより、既存の実習生が不利な状況に置かれることなく、スムーズな移行が可能となります。

2024年から5年間で、最大82万人の外国人労働者を受け入れる見通しを示した日本の育成就労をめぐる今後の動向に要注目です。