日本での留学・就職を考えている人は、「特定技能ビザ」と「特定活動ビザ」について耳にする機会が多いでしょう。日本は内定獲得後から実際に就業開始まで最大で1年以上かかるケースもあり、その期間も外国人はビザが必要です。
今回の記事では特定活動ビザについて詳しく紹介します。日本での就業を考えている人は参考にしてください。
特定活動ビザとは
特定活動ビザとは、日本の法務省が入国管理及び難民認定法に基づいて外国人個人に対して指定するビザの一種です。このビザは、既存の在留資格とは異なる「その他在留資格」とみなされ、非常に多様な種類がある点が特徴です。
特定活動ビザを取得できる外国人の一例は以下の通りです。
- 四年制大学、短期大学、専門学校、大学院の正規課程を修了した留学生で、まだ日本で就職が決まっていない人
- 就労ビザを持っているが、解雇などの理由により仕事の継続が困難となった人
- 就職の内定が取り消された人
- アマチュアスポーツ選手とその家族、看護師、EPA(経済連携協定)に基づく介護スタッフ、国際芸術家、日系外国人の子孫、インストラクターなど
特定活動ビザの対象者は非常に幅広く上記以外の人も対象となるケースがあります。
留学生向け特定活動ビザの種類
ここでは日本の教育機関を卒業した留学生が取得可能な特定活動ビザの種類に絞って紹介します。
卒業後に就職活動を続ける人向け
正規の課程を修了した専門学校や大学の留学生ビザを持つ外国籍の人で、卒業前から始めた就職活動を継続し、日本に留まることを希望する人向けのビザです。
学生ビザの在留期限が数ヶ月残っている場合でも、日本の専門学校や大学を卒業すると、学生ビザによる在留資格は自動的に失効します。また、従来のように週28時間のアルバイトを続けることもできなくなります。日本での就職活動を続けるためには、特定活動ビザに変更する必要があります。
内定者向け
卒業後に勤務先が決定し、入社まで日本に滞在を希望する人向けです。在学時や卒業後に就職が決まっているものの、企業への入社時期までに空白期間が生じる場合が挙げられます。
上記のように就労ビザへ変更できない状況では、特定活動ビザ(内定者対象)を申請することが可能です。申請には、内定先の企業から提供された書類が必要となります。
特定活動ビザ第46号
特定活動ビザ第46号は、法務省の特別な許可を得て、他の在留資格では許可されていない活動に従事するために日本に滞在できる在留資格です。
このビザは、日本の大学以上を卒業した学生で、日本語能力試験N1(JLPT)またはビジネス日本語能力テスト(BJT)で480点以上を獲得した高い日本語能力を持つ人を対象としています。このビザにより、卒業後に日本で柔軟に就労活動を行うことが可能です。
この在留資格は2019年5月に設立され、留学生の雇用機会拡大を目的としています。これにより、留学生は従来、在留資格が与えられなかった業務(例:サービス業や製造業)にも従事することが可能になります。
現在、特定活動ビザ第46号では50種類以上の活動が指定されています。
(法務省:在留資格一覧)
特定活動ビザ46号は、以下のような活動を行う留学生に対して発行されます。
- サイトの運営・管理
- レストランでの顧客サービス
- 小売り業での顧客サービス
- ホテル・旅館での顧客サービス
- 翻訳
- タクシー運転手
- 医療施設でのケアスタッフ
また、特定活動46号を申請するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 日本での留学を通じて学んだ知識を応用する仕事に従事すること
- フルタイム雇用であること
- 日本人の給与レベルと同等またはそれ以上の報酬条件であること
- 日本語でのコミュニケーションが必要な仕事であること
★ 留学生の就職支援に係る「特定活動」についてのガイドライン
★ 在留資格「特定活動(告示46号)」
(出典:法務省)
起業希望者向け
日本の大学以上を卒業した留学生が起業を目指す際に利用できます。日本の大学で学士号または修士号を取得した留学生は、卒業後6ヶ月以内にこのビザを申請できます。条件を満たしていれば、申請から6ヶ月間ビザの延長を申請することができます。
※注意事項:留学生就職促進プログラム選定校やスーパーグローバル大学創成支援事業採択校を卒業した留学生の場合、最大滞在期間が2年に延長される可能性があります。
また、日本の大学を卒業していない外国人が日本で起業したい場合も、地方自治体と連携して、6ヶ月の在留期間を申請できます。条件を満たせば、最大で1年間の在留期間延長が可能です。
特定活動ビザの申請手順
特定活動ビザの申請には、以下の書類が必要です 。
- 住民票
- パスポート
- 在留カード
- 写真(3x4cm)
- 在留資格変更申請書
- 経済的能力を証明する書類
注意:申請書類が日本語以外の言語である場合、日本語訳を添付する必要があります。
大学生や専門学校生の場合は、卒業証書と日本に引き続き滞在する旨を記載した推薦書が必要です。
(参考: 提出資料 )
書類は出入国管理局に提出します。関東に居住している場合は、東京出入国在留管理局に提出が可能です。提出後、審査が行われ、ビザが発行されます。申請書の提出期限は、卒業日から在留資格の期限が切れる日までです。
特定活動ビザのメリット・デメリット
メリット
特定活動ビザを取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 多様性:様々な活動をカバーしており、就職、研修、起業など、多岐にわたる目的で日本に滞在することが可能です。
- 柔軟性:他のビザに比べて柔軟な条件が設定されています。
- 延長可能:条件を満たせば、滞在期間の延長が可能です。
- 就職活動の機会:卒業後に就職が決まるまでの間、就職活動を続けるための時間を提供します。
デメリット
特殊活動ビザには次のようなデメリットもあります。
- 厳格な条件:特定の条件や資格が必要であり、すべての外国人が利用できるわけではありません。
- 複雑な申請プロセス:必要書類や手続きが多く、申請プロセスが複雑な場合が多いです。
- 活動範囲の限定:ビザが許可する活動に限定され、その範囲外の活動を行うことはできません。
- 更新の必要性:定期的にビザの更新が必要となり、その都度、条件を満たす必要があります。
特定活動ビザと特定技能ビザの違い
特定活動ビザと特定技能ビザは、名称が似ているため混同されがちですが、目的、対象者において大きく異なります。以下に、それぞれのビザの特徴と違いを詳しく説明します。
特定活動ビザ
- 多様な用途:研究、教育、ビジネス、文化活動など、多様な目的で日本に滞在する外国人に対して発行されます。
- 柔軟性:滞在期間は活動内容に応じて調整可能です。
- 更新可能:条件を満たしている場合、ビザの更新が可能です。
特定技能ビザ
- 労働市場への対応:介護、建設、農業など、人手不足が顕著な特定産業分野で働く外国人労働者を対象としています。このビザは、日本の労働市場のニーズに応えることを目的としています。
- 技能と経験の要件:特定の技能レベルと、関連する分野での実務経験が必要です。これは、対象となる業界で即戦力となる人材を確保するためです。
- 延長期間の限定:特定技能1号は最大5年までの滞在が可能ですが、それ以上の更新が必要な場合は、特定技能2号はを取得する必要があります。
まとめ
日本に住んで働く外国人の数が増加している現状を踏まえ、日本政府は各業種や具体的な滞在目的に合わせた多様なビザを設けています。本記事を通じて、特定活動ビザについての理解を深め、申請する際には万全の準備を行うことが重要です。
日本での就労を希望するベトナム人にとって、特定活動ビザはさまざまな機会を提供します。このビザには、就職、研修、起業など、特定の目的に応じた柔軟性があります。申請プロセスを円滑に進めるためには、必要書類の準備、条件の確認など、事前にしっかりと準備しておくことが必須です。