今回は日本の会社で働くうえで、気をつけるべきことについてお話します。
日本の学校、会社では、4月から新しいスタートを始め、これを学校では「新学期」会社では「新年度」と呼びます。
日本の会社で気をつけるべきこと
「新年度」をむかえて、新しく会社に入る、新入社員が先輩や上司から、よく「いわれること」を、日本人の私の経験から、みなさんに伝えたいと思います。
ベトナムでも同じだ、と思うことが多いかもしれませんが、日本の文化とあわせて、お話します。これから書くことは、すべて正しいものとは限りません。会社によって、ルールも違うかもしれません。その点は注意しながら読んでください。
空気を読む
「空気を読む」というのは、日本の独特な文化です。例えば、上司が忙しそうにしているときに「すみません、明日休みたいのですが、いいですか」と聞くことは、いいタイミングではありません。
「今上司は忙しそうだから、あとで話そう」と気をつかうことが、空気を読むことの一つです。
ただし、会社に入ってから、色々な日本人と仕事をすると思いますが、「忙しそうにしていても、何かあれば、すぐ話してほしい」という上司の方も、いるかもしれません。こうしたことは、会社に入ってからでないと、わからないことなので、仕事を覚えることと同時に、心がけてみてください。
スピードよりも正しさ
人によって、考え方は違いますが、一般的に日本では、どんなに早く仕事が出来ても、「間違い」が多いと評価をされません。これは新入社員のときに、必ず言われることの一つです。
評価されようと頑張って、急いで、仕事を終えても、細かなミスがあると、次の仕事を頼まれなくなってしまいます。信用を得るためには、「間違いのない」仕事を心がけることで、良い人間関係が作れるはずです。
メモを持ち歩く
先輩や上司から仕事を教えてもらうときは、メモを取りながら聞くことが、大切だと言われます。これは相手に対して「聞いている姿勢」を伝えるため、「何度も同じことを聞かない」ために、とても大切なことです。
日本ではメモを持たずに、新入社員が話を聞いていると「メモを取らずに、この仕事全部おぼえましたか?もう同じ説明はしないよ」と注意されてしまうことがあります。
「できないこと」は「できない」と言う
仕事に慣れてくると、たくさんの仕事をお願いされるようになります。そのときに「これ明日までにできる?」と聞かれることが、あるかもしれません。そのとき、自分が忙しかった場合、決まった日までに、できない場合には「〇〇があるため、できません」と伝えることが大切です。
また、これに加えて「今〇〇の仕事をしていますが、どちらを先にすべきですか」や「明日は難しいので、あさってまで待っていただけますか」と相談することで、タスク管理のスキルが評価され、先輩や上司から信頼されるはずです。
自分の仕事は自分が最後までやる
難しくて、時間がなくて、忘れていて、できなかった仕事があったときには、だれかがサポートしてくれると思います。しかし、「だれかがやってくれるから、もう自分の仕事ではない」と考えてはいけません。
もともと自分の仕事であったことは、「その後どうなっているのか」「だれがあなたの代わりにやっているのか」「いつ終わるのか」「自分に何かできることはないか」こうしたことを考えることが、とても大切です。「自分の仕事は最後まで責任をもつ」ことを、日本の新入社員は教わります。
習うよりも慣れる
これも日本の独特な文化のひとつで、「すべてを教えてもらうのではなく、まず自分でやってみて覚える」という考え方があります。「すべて教えてもらわないとわからないよ」と思うのですが、仕事の多くは、自分でやってみて、はじめてわかることも多いと思います。
たとえばスポーツの世界でも、ルールだけ教えてもらっても、そのスポーツが上手にはなりません。すべての仕事が、この考え方に合うわけではありませんが、もし「日本の人は1~10まで全部教えてくれない」と思ったら、「まずは、やってみてから、分からないことを聞く」という考え方を、思い出してください。
報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)
日本で働きたいと考える、多くの人が、この「報連相」ということばを、聞いたことがある、知っている、と思いますが、日本語の「報告」「連絡」「相談」を意味します。さきほどの話ともかかわりますが、
- 報告の例(「この仕事が終わりました」、「今ここまで終わりました」)
- 連絡の例(「〇〇さんから電話です」、「会議は△日に決まりました」)
- 相談の例(「~については、どうしたらよいですか」)
これらの大事なコミュニケーションについて、まとめているものです。日本ではこの「報連相」の練習を入社する前に、人事部が研修することもあり、伝える内容を「シンプルに」「正しく」「短く」することが大切だと教わります。
会社の悪口を外で言わない
仕事が終わると、友だちとごはんを食べにいったりすると楽しいですよね。ただ、電車やバス、レストランの中で「会社のこと」を話すことは、いいことではありません。
誰が、どこで、何を聞いているか分からないですし、会社の大切な情報がほかの人に、知られてしまうことがあるので、この点はとくに気を付けましょう。
日本で実際にあるのは「会社のカフェで上司の悪口を同僚と話していたら、そこにいた別の社員が聞いていて、その上司に悪口が伝わってしまった」「電車で会社の話をしていたら、ライバル会社の人が近くにいて、大切な情報を聞かれてしまった」というようなことがあります。
食事の場では年上の方に気をつかう
最近日本では「会社の飲み会に行かない」新入社員が増えています。日本のお酒の場には、たくさんのルールがあって、食事を楽しめる時間がないと考える人がいます。こうした理由から、先輩、上司とごはんを食べることを、いやがる人が多いです。
ルールの例をいうと、
- 「年下は入り口近くに座り、店員に注文をしやすくする」
- 「年下は年上の人のグラスに、お酒が入っているかをチェックする」
- 「お酒が足りなければ、年下がグラスに入れる、お酒を注文をする」
- 「年上の人が食べるまでは、先に食べない」などです。
たくさんあるので、私はこのルールを書くだけで疲れてしまいます。
ただし、このルールは日本人全員が大切にするものではありません。「やらなくて大丈夫、リラックスして」と言ってくれる人も、いると思うので、その時はリラックスしてご飯を楽しんでください。ただし、人に迷惑をかけるほどの「飲みすぎ」には気をつけてください。
はじめたころの気持ちを忘れないこと
仕事に慣れてくると、人はだんだんと気持ちがゆるんだり、仕事が雑になったりします。こうしたときに、「はじめたときの気持ちを忘れないように」ということばを、日本人は大切にします。
これを昔のことばで「初心忘るべからず」と言います。日本の人によく見られる「謙虚さ」というのは、こういう「教え」から来ています。
ちなみに、日本語を勉強しているベトナムの方に「日本語が上手ですね」というと、「いえいえ、まだまだです」と答える人が多いです。これは学校で習ったことば、だと思いますが、これも「初心を忘れない」ことの一つなのです。
「日本人と外国人」=「文化の違う人」が日本社会でコミュニケーションする中で、たくさんの「違い」があると思います。その中で私は、すべて日本のルールを絶対に守らなければならない、とは思っていません。
ただ、こうした文化、ルールがあることを、前から知っておくことで、みなさんがショックを受けることが、少なくなることを、願っています。
こうした文化、ルールを知っていれば、日本に行ったときに「日本のことをよく知っているね」と周りの人から良く思ってもらい、先輩、上司、または友達とも人間関係が作れるはずです。
日本で働くときの、参考にしてください。