経営・管理ビザを取得すると、日本国内での会社設立や経営管理が可能となります。しかし、経営・管理ビザは他の就労ビザと比較すると許可率が低いため、取得要件のチェックや事前に必要書類の準備を徹底することが大切です。
今回は、日本でビジネスを展開したい外国人に向けて、経営・管理ビザ取得の流れ、要件、必要書類などの重要ポイントについて詳しく解説します。
経営・管理ビザとは
経営・管理ビザとは、外国人が日本で事業経営や管理業務を行うために必要な在留資格です。以前は「投資・経営ビザ」と呼ばれていましたが、外国資本との関係にかかわらず取得できるようになったため、「経営・管理ビザ」へと名称が変わりました。
経営・管理ビザを保有していると、日本において会社の代表取締役、取締役、支店長、部長など管理職に就き働くことができます。経営・管理ビザによる在留期間は3ヵ月・4ヵ月・1年・3年・5年と中長期的な滞在が可能です。
経営・管理ビザ取得の流れ
基本事項の決定
まず、株式会社を設立するための基本事項を決めます。会社名、住所、事業目的、発起人や役員の構成などが含まれます。会社の住所を決定する際には、実際に事務所を借りるか、一時的に自宅を使用するかを選択する必要があります。
定款の作成
次に、会社の基本ルールを定めた「定款」を作成します。定款は自分で作成することも、専門家に依頼することも可能です。定款が完成したら、公証役場で内容を確認してもらい、問題がなければ認証を受けます。電子定款を利用する場合は無償ですが、紙の定款には40,000円の印紙税が発生します。
資本金の振込
定款の認証後、会社設立者の銀行口座から資本金を振り込みます。資本金を振り込む銀行は、金融庁から認可を受けた日本の銀行、もしくは海外銀行の日本支店でなければなりません。
会社設立
法務局で法人設立登記を行います。法人設立登記とは、会社の名称や目的などの事項を申請する手続きです。登記に必要な登録免許税は、資本金の0.7%、または資本金が150,000円以下の場合には、一律150,000円が適用されます。
各種届出
会社設立が完了したら、各種届出を行います。税務署、都道府県税事務所、社会保険事務所などに法人設立届や給与支払い事務所の開設届などの各種届出を行います。
許認可の取得
許認可の取得 営業許可が必要な業種については、経営・管理ビザの申請前に許認可を取得します。リサイクルショップ、飲食店、人材紹介業、不動産業、建築業などがこれに該当します。
経営・管理ビザの申請
最後に、必要な書類を準備したうえで入国管理局に経営管理ビザの申請を行います。
経営・管理ビザの取得要件
経営・管理ビザを取得するには、以下の三つの要件を満たす必要があります。
- 資本金が500万円以上、もしくは日本に居住する従業員が2名以上
- 日本における事業所の確保
- 事業の安定性・継続性を証明
以下、各要件について詳しく解説します。
資本金
経営・管理ビザ取得にあたり、設立する企業の規模を客観的に示す必要があります。ビザを申請する外国人本人による資本金の確保、または日本人、永住者、日本人の配偶者などの日本に居住する常勤職員を2名以上雇わなければなりません。資本金の出所は厳格に調査され、正当な方法で調達されたものである必要があります。そのため、貯金通帳の記録、送金の記録、借用書など、資金の出所を証明する書類の準備が求められます。
事業所
事業所は日本国内に確保されている必要があります。事務所や店舗などの独立したスペースが求められ、申請時には既に営業を開始できる状態である必要があります。具体的には、内装が完成しており、営業に必要な機材や設備が揃っていることが必要です。場合によっては、メニュー表が完成しているなど、即座に営業を開始できる準備が整っている必要があります。
独立した事業所の確保は必須であり、バーチャルオフィスやレンタルオフィス、自宅を事業所として使用することは原則として認められていません。他社の事務所の一部を利用する場合でも、共有スペースを設け、自社の独立性を保つことが求められます。
事業計画
事業の安定性および継続性を証明することは、経営・管理ビザを取得する上で不可欠です。申請者は、具体的な事業計画書を作成し、出入国管理局に提出する必要があります。この事業計画書には、事業内容、収支見込み、売上高、経費、ビジネスモデル、市場分析、マーケティング戦略などを詳細に記述し、ペーパーカンパニーではないことを証明しなければなりません。
経営・管理ビザ申請に必要な書類
経営・管理ビザを申請する際に、起業するのか、それとも既存企業の管理職になるのかによって、必要な書類は変わってきます。全ての申請者に必要な書類・起業予定の人に必要な書類をそれぞれ紹介します。
全ての申請者が用意する書類
- パスポートのコピー
- 証明写真
- 在留資格変更許可申請書(他のビザから変更する場合)
- 在留資格認定証明書交付申請書(海外から呼び寄せる場合)
- 事業計画書
- 事業所の賃貸契約書のコピー(すでに確保している場合)
- 申請者の履歴書
- 申請者の職務経歴書
- 経営者や従業員の名簿(予定含む)
- 申請者が以前に経営・管理した事業の証明書類(該当する場合)
起業予定の人が追加で用意する書類
- 会社設立登記簿謄本または設立予定書
- 資本金の証明書類(銀行残高証明書など)
- 事業の収益性を示す資料(収益計画書など)
- 事業に必要な許認可書類のコピー(該当する場合)
- 賃貸人の同意書(事業所を自宅の一部として使用する場合)
- 財務計画書(初期投資、運転資本、予想収益などを含む)
- 市場分析報告書(対象市場、競合分析、マーケティング戦略など)
- 取引先・仕入れ先・外注先の契約書のコピー(予定含む)
まとめ
今回は、外国人起業家必見の経営・管理ビザ取得のポイントを紹介しました。経営・管理ビザは、日本でのビジネス展開において不可欠であり、他の就労ビザに比べて取得率が低いため、事前の準備と書類の精査が重要です。本記事を参考にして、経営・管理ビザ取得の第一歩を踏み出しましょう。
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