このシリーズでは、日本で働くうえで、避けては通れない「面接」の対策についてお話します。第2回目は「職務経歴・転職理由」についてです。
シリーズの別記事:
日本企業の面接対策①―自己紹介編-
日本企業の面接対策③―人物評価―
日本企業の面接対策④―入社条件―
日本企業の面接対策⑤-応用編-
(その他)
面接に関する基礎的な情報はこちらの別記事:日系企業のインタビュー経験
履歴書の書き方に関する情報は、別記事:履歴書の書き方について
この記事では具体的な質問内容を上げ、知っておくべきポイント、気を付けるべきこと、について、これまで数百人のベトナム人面接に関わってきた私から、「日本人の目線」からアドバイスしたいと思います。
面接で聞かれる質問
どうして日本(日本語)に興味を持ちましたか?
- 日本または日本企業で働きたい理由につながる話をします。
- 「どうして~した?」と過去形の質問ですが、期待する答えは「日本で、日本語でこれから何をしたいか」という未来の目標です。
- ベトナム人の失踪や犯罪が問題視される中で、非常に重要な質問の一つです。
これまで多くのベトナム人の面接に関わってきた中で、
「小さいころからアニメやマンガの文化にふれ・・・」
「日本の文化、歴史に興味があり・・・」
「日本に旅行、留学したことがあり・・・」
こうした理由を答える人が多い印象でした。これらは悪い答えではないですが、もう少し言葉を付け加えると、立派な志望動機になります。たとえば・・・
正しい伝え方
〇「アニメなどを通して親しみのある日本ですが、日本の経済やビジネスなど、その他のことも知りたくなり、日本語を勉強しています。」
〇「ベトナム経済にも大きく貢献した日本の技術力に関心を持ち、自国の発展に貢献したいと考え、日本で働くことを決意しました。」
〇「日本留学の経験から、日本社会を支えてきた日本人の働き方に関心をもち、自らも日本語を使って挑戦したいと考えました。」
相手の企業、国、文化、技術や歴史に敬意をもって話すことが重要でしょう。こうした理由は、今から考えるとしても、遅いことではありません。
こうした理由を考え、他人に言い続けることで自分のモチベーションにもなるはずです。本音には、お金を稼ぎたい、という気持ちがあっても、それだけの理由では、長く日本で、日系企業で仕事をすることは、苦しみにつながってしまうかもしれません。
これまでのキャリア/仕事内容を教えてください。
- 自己紹介の職務経歴よりも、さらに詳しく体験談をふまえて説明します。
- 経歴について、ウソをつくことは絶対にしてはいけません。
一般的に「職務経歴」は過去から現在の順に沿って説明しますので、
各社の職務経歴(正しい伝え方)
〇「△△大学を2015年に卒業し、新卒でA社に入社しました。こちらでは、〇○の業務を担当しておりました。このほかに・・」
ここは、みなさん共通して、しっかりと話せるように準備しておくべきです。
〇「入社から1年後、〇〇に配属し、□□のプロジェクトを任されました。こちらでは約2年間、チームにいた10人のスタッフをまとめるリーダーとして、企画書作成、営業交渉、スケジュール管理を行いました。」
入社後、自分がアピールできる経歴を話します。日系企業が評価するポイントとしては、
- 業務をはじめから最後まで、自分の手で完了させたか。
- チームをリードしたり、サポートしたり、役割を持って仕事をしていたか。
- 会社や上司から信頼を受け、ある程度責任のある仕事を持っていたか。
- 1つのプロジェクトを1年以上、1つの会社で2、3年勤め続けていたか。
- スケジュールを管理し、仕事を行うことができたか。
こうした点がポイントとなります。
職務経歴については、「経験がないこと」を「経験があります」とウソをつくことは決してしないでください。
経験がないから採用しない、ということではありませんし、「経験がある」とウソをついて入社してから苦しむのは、あなた自身です。経験が無い場合、たとえば、
正しい伝え方
Q.経理の経験がありますか?
A.「経理の経験はありません。しかし、総務業務全般を担当していた際に、経費精算など、お金を計算し、帳票管理する経験はありました。」
というように、経理ポジションの経験、資格がなくても、関連業務の経験があることを伝えるのは良いでしょう。
転職理由
〇「A社で3年勤めたのち、さらなるスキルアップを目指したいと考え、B社に転職しました。B社ではこれまでの営業企画の他、経営管理の仕事を任せていただきました」
転職理由は、面接官が最も気にする質問の一つと言っていいでしょう。
ここでポイントなのは、転職理由が「前向き(ポジティブ)」であることです。
- ✖「仕事が退屈になり、給料も低かったので、辞めました。」
- ✖「上司や同僚と意見が合わず、辞めました。」
- ✖「会社の雰囲気が悪く、辞めました。」
こうした理由が、本当の理由だとしても、積極的に言うことはおススメしません。他社、他人の否定は、「この会社も同じ理由で辞めるのでは」という不信感につながります。事実を話すにも「伝え方」が大切です。
✖「仕事が退屈になり、給料も低かったので、辞めました。」
→〇「自分の仕事の幅を広げたいと考え、キャリアアップのチャンスもありましたので、A社を退職しました。」
伝え方ひとつで、まったく印象は異なるはずです。
また、家族の都合(親の介護)、自身の体調不良が原因である場合は、その旨を正直に説明してください。ただし、この説明のあとには「今は介護、病気など、仕事に影響があるものはない」ことは、しっかり伝えましょう。
ベトナム多くの人は1年、2年で会社を転職している場合が多いですが、それぞれの転職について「理由」を説明できるようにしましょう。
これまでの仕事でどんな成功や失敗がありましたか?
- 成功と失敗はどちらの体験談も必ず「良い結果」で終わるように話す。
- こちらもウソをついて話すことはしない。
- あなたの答えにたいして、さらに2つ、3つの質問がくることを予想する。
「私は1年間会社の新規プロジェクトのリーダーとしてかかわり、チームのモチベーションを保つことに苦労しました。ときにもめごとや、チームの分断を経験しましたが、チームにとって最善の方向を見失わないようにしました。1年後このチームは目標の売上を達成しました。」
- Q.具体的に、どのようなもめごとがありましたか?
- Q.チームにとって最善の方向とは、どのようなものでしたか?
- Q.この経験から、あなたが得たものは何ですか?
どのような体験談にも、その詳細を聞くための質問が来る可能性はあります。
「A社にいたとき、お客様とのメールのやり取りで、お客様に誤解を与える文章を送ってしまい、怒らせてしまったことがありました。自分の日本語には自信があったのですが、まだまだ勉強が足りないことに気づきました。」
- Q.具体的に、どんな文章を送ったのですか。
- Q.そのとき、お客様とのトラブルをどのように解決しましたか?
- Q.その経験から、どのようなことに気を付けるようになりましたか?
こちらは失敗談ですので、その後の対策をしっかり説明する必要があります。
「まずは上司に報告をし、指示を受けました。メールで謝罪するのではなく、電話で話して謝りました。このときは仕事に慣れたころで、自分で考え行動していましたがお客様とのやり取りは、日本人上司に相談をしながら対応するようにしました。」
「この経験から、メールだけでやり取りをせず、直接お話することの大切さ、自分で判断せずに、周りと相談しながら進める大切さに気づき、気を付けるようになりました。」
まとめ
日本企業の面接対策、第2回目は「職務経歴・転職理由」についてアドバイスしました。以下まとめです。
- 日本で、日系企業で何をしたいか、未来の目標を伝える。
- 職務経歴や転職理由でウソはつかない
- 「伝え方」ひとつで、あなたの印象は180度変わることを知る。
- あなたの回答に対して、続けて質問されることを予想しておく。
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