このシリーズでは、日本で働くうえで、避けては通れない「面接」の対策についてお話します。第4回目は、大切な「入社条件」について、です。
シリーズの別記事:
日本企業の面接対策①―自己紹介編-
日本企業の面接対策②-職務経歴・転職理由-
日系企業の面接対策③-人物評価-
日本企業の面接対策⑤-応用編-
(その他)
面接に関する基礎的な情報はこちらの別記事:日系企業のインタビュー経験
履歴書の書き方に関する情報は、別記事:履歴書の書き方について
この記事では具体的な質問内容を上げ、知っておくべきポイント、気を付けるべきこと、について、これまで数百人のベトナム人面接に関わってきた私から、「日本人の目線」からアドバイスしたいと思います。
面接で聞かれる質問
ポジション・業務内容
- 応募したポジションと業務内容は、しっかり理解します。
- 複数社受ける場合に、他社の求人と混乱しないようにします。
- 「求人票を見れば、わかること」を自分の口で話せるか、面接官は見ています。
- 「この会社の仕事内容は、わかりますか?」の問いに明確に答えます。
良くない例
- ✖「総務ポジションに応募します。総務の仕事をします。」
- ✖「総務の仕事だと思います。」
- ✖「働くチャンスがあれば、何でもやります。」
これまで面接サポートをしてきて、ポジションタイトルは分かっていても、仕事内容を話せる人は、多くありませんでした。
「~だと思います。」という表現を使う人が多いですが、これは「確かな答えをもっていないですが」というニュアンスで伝わるため、この質問においては、マイナス評価になります。面接の回答は常に、「~と考えます。」「~です。」と言い切ります。
「何でもやります」というのは、言葉としては良いように聞こえますが、「自分のミッションや役割」を理解していない、というマイナス評価にしかなりません。
正しい伝え方
〇「総務ポジションにて、社内の人事・経理・社内の連絡調整・日本人代表のサポートをします。これまでの経験が活かせると考えます。」
〇「 自分のミッションは人事・経理を含めた総務です。御社の新規事業をサポートするため、このほか発生する業務についても、必要に応じて臨機応変に対応します。」
給与・条件
- 求人票に書いてある給与額を確認します。
- 求人票に給与額の記載が無い場合は、現在の給与、または他社の同ポジションの給与を複数参考にします。
- 希望給与額が明確にある場合は、そのまま伝えます。
- 現在の給与、希望給与額は「円・USD・VND」いずれの通貨も、日本語で言えるようにします。
面接サポートをする中で、多くの方が、日本語の数字の読み方に苦労していることがわかりました。これは、日本の独特の数え方があるためで、日本人でもすぐに言えない人がいます。
こればかりは、事前に準備をする以外方法はありません。以下の数字を正しく読めるか確認しましょう。
- 3,572,000円・・・・ ?
- 158,000円・・・・ ?
- 1,950USD・・・・ ?
- 24,800,342 VND・・・?
- 531,000,000 VND・・・?
日本の数字の数え方には、「十」「百」「千」「万」「百万」「千万」「億」・・という単位があり、ベトナム語や英語の数え方と違います。
つまり、日本人にとって、”hundred”,”Thousand”, “Hundred Thousand”,”Million”・・・という数え方は習慣にありません。
日本人の面接官に対しては、日本語で数字を伝えることができるように、十分注意してください。(読み方はインターネットで数字を入力すれば、調べることができます。こちらを参考にしてみてください。)
(先ほどの答え)
- 3,572,000 円:さんびゃく ごじゅう ななまん にせん (えん)
- 158,000 円:じゅうご まん はっせん(えん)
- 1,950 USD:せん きゅうひゃく ごじゅう (USD)
- 24,800,342 VND: にせん よんひゃく はちじゅう まん さんびゃく よんじゅう に (VND)
- 531,000,000 VND: ごおく さんぜん ひゃくまん (VND)
福利厚生
以下の質問は、面接であなたが質問する内容としてふさわしくありません。
- ✖「有給休暇はいつから取れますか?」
- ✖ 「年間で休日はどのくらいありますか?」
- ✖ 「1年に1回、母国に帰りたいですが、交通費はいただけますか?」
- ✖ 「社員旅行はありますか?」
- ✖ 「残業はありますか? ある場合、残業手当は出ますか?」
まず、求人票に書いてある情報を、わざわざ聞くことは、良くありません。「それは、求人票を事前に読んでください」と面接官に思われてしまうかもしれません。
「お休みがほしい」「お金がほしい」という希望が、直接的に伝わる質問をすることは避けてください。面接の最後に、「何か質問はありますか」と聞かれ、これらを話す人が多いですが、面接の最後に、良くない印象で終わることは、おススメできません。
たとえば、残業時間について質問する場合、聞き方を変えれば好印象になります。
〇「仕事終わりに、日本語クラスを受講しようと考えています。今オンラインスクールを探しているのですが、平日は週に何時間程度の残業を想定しておけば、良いでしょうか。」
これにより、「残業を拒まない意思表示」、「日本語学習に関する意欲」が伝えられます。
住環境
日本生活において、仕事場以上に長く滞在するのが、家になります。この点は、どのような環境下で生活をするのか、しっかり確認しておきましょう。
- あなたが住むのは、会社の寮か、アパートか。
- 住む寮、アパートは一人か、複数人で住むか。
- 1ヵ月あたりの家賃・光熱費等、どの程度の経費を想定すれば良いか。
- 住む場所から会社までの通勤方法(徒歩?自転車?電車?)
- 住む場所から会社までの通勤時間
具体的な質問をすることで、「本当に入社したい」「入社後のことを真剣に考えている」ことをアピールできます。
勤務開始日
仕事を始めることができる日は、確実に決めておくようにしましょう。日本では、この入社日が遅くなることは、タブーです。外国人社員とのトラブルで、この勤務開始日については、非常に多くの日本企業が問題を抱え、悩んでいます。
良くない例
- ✖「今の会社の仕事が終わったら、入社できる日を連絡します。」
- ✖「4月には、入社できると思います」(「思います」はNG)
先ほども書きましたが、「思います」は、「あなたのこと」なのに、「〇〇と思います、(本当のことは知らないけど)」と、「他人事」に聞こえてしまう、危ないワードです。
これは、日本人の口癖でもありますが、たとえば営業マンがお客さんに、
- お客さん「御社のサービスは全部で、98,000円ですね。」
- 営業マン「はい、そうだと思います。」
この答えは、お客さんに対して、「発言に責任を持たない人」という印象を与え「不信感」を与えてしまいます。
正しくは、営業マン「はい、おっしゃる通りです。」と答えます。
正しい伝え方
- 〇「御社のスケジュールに合わせます」
- 〇「4月1日から入社できます。」(月、日まではっきりと)
希望勤務期間
Q「あなたは、どのくらい弊社で働きたいと思いますか?」
これは、日本人にとっても、正解のない、難しい質問です。しかし、アドバイスするとなれば、多くの日本企業のビジネスマンには、「3年働いて、1人前の社員になる」という考え方があります。
これは、「3年でやっと、日本社会や会社、業界のことが分かる」という考え方によるものであり、企業が勤務期間を指定(1年、2年のみ)していない限りは、このビジネスマインドを知っておく必要があります。
これに対し、もしあなたに3年未満の勤務を希望する正当な理由がある場合には、ウソをつく必要はありませんが、何となく「日本で働きたい」と考えている人は、この「3年」を一つの基準として、よく考えてみてください。
これは、家族ともよく相談しなくてはならないことですし、もし「3年」と言いながら、半年や1年で母国に帰る人が多いと、「ベトナム人は約束を守らない」というイメージがついてしまいます。一人一人の言動が、その国民の印象を与えることを、ここで認識しておいてください。
帰国の時期
日本で長く働きたい、と考える人でも、この質問には、確かな答えが必要です。
- 〇「家族とも話し合い、3年から5年間は、しっかりと日本で仕事をする気持ちがあります。」
- 〇「御社でできるだけ長く働きたいと思いますが、私には、どのようなキャリアプランが考えられますでしょうか」
こうした答えができれば、面接官の印象は、とても良いものになります。
しかし、無責任にこのフレーズを使うことは避けてください。これらは、あくまで参考例であって、あなたと、企業の面接においては、「事実」を共有し合う必要があります。
まとめ
日本企業の面接対策、第4回目は「入社条件」に関する質問、についてアドバイスしました。以下まとめです。
- 応募するポジション、業務内容、福利厚生は求人票に記載された事項をしっかり読んでおく。
- 数字は、日本語で、円、VND、USD、どの通貨でも答えられるようにする。
- 住環境に関する質問は、生活費を試算するうえで大切なことなので、確認をする。
- 希望条件や入社時期について「~と思います」という表現は避ける。
- 日本での勤務期間は家族とよく話し合い、具体的な目標を持つ。
面接対策の記事はこのほかにも続きます・・・・