日本人の「性格」をつくる学校教育

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日本人の「性格」をつくる学校教育

今回は日本人の性格に深くかかわる「教育」についてお話します。みなさんにとって日本人は、どんな人というイメージがありますか?よく日本人は「チームワーク」が上手ですが、「自分の意見を伝える」ことが下手だと言われます。

こうした日本人の性格はどのように出来ているのかを、みなさんと考えたいと思います。

日本の学校教育で教わること

団体行動だんたいこうどう

日本の教育は、3~4才ころの幼稚園ようちえんからはじまります。幼稚園では、子どもたちが先生の弾くピアノに合わせて、歌を歌います。また、外をさんぽしたり、公園にあそびにいったりしますが、このときは、必ず列を作り、手をつないで行動します。

もしルールを守らない子どもがいると、先生はすぐに注意ちゅういします。幼稚園ではイベントとして、子どもたちのお父さん、お母さんを呼び、楽器がっきを使ったりして、げき(ミュージカルのようなもの)をやります。これを発表会はっぴょうかいといいます。

この教育カリキュラムには「みんなで、協力しあい、ゴールに向かう」ことがコンセプトにあります。この考え方は、幼稚園からはじまり、中学校までつづきます。

スポーツ教育(体育)の大切さ

幼稚園が終わり、小学校へ行くと、体育たいいくに力が入ります。体育のクラスでは、たくさんのスポーツを通じて、団体行動の大切さを学びます。クラスには、スポーツが好きな子もいれば、きらいな子もいます。そうしたときに、みんなで助け合って、教え合って、「できた!」のよろこびを共有します。

また、小学校と中学校では、年に1回、運動会うんどうかいというスポーツイベントが開かれます。ここでは学生たちが、2つのチームに分かれて、ポイントを多く取ったほうが勝ちます。

このチームは赤と白のチームに分かれて、学生たちは同じ色の帽子ぼうしをかぶり、たくさんのゲームで戦います。 (下の写真は、大きなボールをどちらが先に、ゴールまでもっていけるか、というゲームです。)

また、それぞれのチームは同じチームの仲間を応援おうえんするだけでなく、相手のチームを応援するセレモニーがあります。これを「エール交換」といいます。

相手の「がんばり」を称(たた)える

日本では “自分のなかまではない” 相手を称える習慣しゅうかんがあり、「相手がいるから、この試合ができることを感謝かんしゃする」と教わります。

たとえば日本のスポーツである「柔道(じゅうどう)」や「空手(からて)」ではれいにはじまり、礼に終わる」という言葉があり、これは「試合の前も、後も相手をリスペクトしなさい」ということを表しています。「柔道」や「空手」のことを「武道(ぶどう)」といいますが、試合では、必ず始まる前、終わった後、頭を下げて、相手に「礼」をしています。

クラブ活動にある文化

日本では、中学校と高校では多くの学生がクラブ活動をします。中でもスポーツのクラブ活動は、教育がきびしく、だれかひとりが、まちがったことをしたら、みんなで反省(はんせい)するというルールがあります。これは連帯責任れんたいせきにんといいます。たとえば、このようなケースです。

サッカー部のAさんが、練習をサボったことが、コーチにみつかってしまった。コーチはクラブのみんなを集めて、グラウンドを10周させた。

バドミントン部のBさんが、学校に持ってきてはいけない、おかしを持っていた。これを知ると、コーチはクラブのみんなに、学校のそうじを、毎朝1時間するように言った。そして、全員に髪の毛を坊主ぼうずにしてくるように言った。

「誰かがミスしたことは、みんなで責任を取る」ことで、「チームワークが強くなる」と日本では昔から信じられています。しかし、こうした教育は、パワーハラスメントではないか、という人もいて、今日本では、とても問題になっています。なので最近では、「ほめる」教育も注目されていて、やさしいコーチが、たくさん増えてきました。

頭を丸める文化

日本では、頭を坊主にして、反省を表す文化があります。そして、なぜかわかりませんが、野球やきゅうクラブの学生は、必ず坊主にしています。 どうして、このルールが野球部にだけあるのか、誰もわからないです。

ちなみに、「坊主」はファッションでもありますので、もし日本で坊主の人を見ても、みんなが何かに反省しているわけではない、ということを、おぼえておいてください。

日本の学校ではこいがタブー?

日本の学校教育においては、もうひとつ、きびしいルールがあります。特にクラブ活動をしている学生は、「ボーイフレンド、ガールフレンドを作ってはいけません」といわれることが多いです。

この理由について「クラブ活動に集中できないから」と先生から言われます。でも、好きな人と付き合えないほうが、集中できないと思いませんか?

日本の学校には「よくわからないルール」がたくさんあるので、最近では、きびしすぎるルールを変えてほしい、と声をあげる学生も出てきました。 このほかのルールには、次のようなものがあります。

男子は髪の毛を短くすること、女子は髪を結ぶこと、女子は下着ブラジャーの色を白にすること、授業じゅぎょう中にはトイレに行かないこと・・・・

学生たちは、これらのルールを絶対に守っているわけではなく、昔からみんな先生に、ばれないようにしていました。「恋をしてはいけません」といわれたら、「恋をしてみたくなる」のが人間ですよね。

「なぜこのルールがあるのですか?」と先生に聞くと「みんな同じルールで生活しないといけない」と話します。「ほかの人と同じでいなさい」という教育は「パーソナリティ」をなくし、「自分を表現する」ことができなくなってしまいます。だから日本人は「自分のパーソナリティや、意見を伝えること」がとても下手なのだと思います。

来たときよりもキレイにして帰りなさい

日本の学校教育は、悪いものばかりでなく、良いものもあります。日本では小学校から高校まで、お昼ごはんのあとに、「そうじ」の時間が毎日あります。「自分たちが使うところを、自分たちできれいにする」ことを学ぶためです。

日本では学校の旅行に行くときに「来る前よりもホテルの部屋をキレイにして帰りなさい」といわれます。ホテルのスタッフがキレイにしてくれている部屋なので、それよりもキレイにすることが無理なのは、わかっていますが、「それくらいの気持ちで、片付けをしなさい」という意味があります。

実際に私もクラブ活動をしていたときに、ホテルを出るときは、掃除をして、ベッドをきれいにして、ホテルの人に大きな声でお礼を言うことを、必ずしていました。

サッカーの試合のあとに日本人の選手がロッカールームをキレイにし、日本人サポーターがごみ拾いと片付けをして帰ることが、「すばらしいこと」として世界でニュースになりましたが、これは日本の学校教育で教わることなのです。

ちなみに、学生時代、ホテルの部屋を「キレイにして」出た私は、うっかり部屋に忘れものをしました。それがわかるとコーチは「ホテルに迷惑めいわくをかけた」という理由で、全員にグラウンド10周走るように言いました。日本の学校教育は、いいところも悪いところも、今の日本人の「性格」に深くかかわっています。