在留資格「留学」は、日本の教育機関で学ぶためのものであり、本来は就労を目的としていません。留学ビザを持つ学生は「資格外活動許可」を取得することで、限定的な条件下でアルバイトが可能ですが、正社員として企業に雇用されるためには、就労ビザに切り替える必要があります。
今回は、留学生が日本で正規雇用を目指す際に必要となる「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの就労ビザへの変更手続き、必要書類、教育機関ごとの違いについて詳しく解説します。
変更手続きの流れ
「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更を希望する留学生は、まず内定を受けた後に雇用契約書や労働条件通知書を含む申請資料を準備します。卒業予定年の12月1日から在留資格の変更許可申請を行え、審査期間は約1〜3ヶ月です。申請は、留学生が居住する地域を管轄する地方出入国在留管理局で行います。申請は留学生本人や受け入れ企業の雇用主によって可能です。
特定技能ビザへの変更も、一定の条件を満たせば可能です。この場合、対象分野の技能試験と日本語能力試験に合格していることが条件となります。その後、企業との雇用契約締結を経て、在留資格変更許可申請のための必要書類を収集し作成します。
教育機関ごとの要件の違い
教育機関によって異なる「技術・人文・国際業務」ビザの変更に必要な要件について、日本語学校、専門学校、大学の各留学生に適用される基準を解説します。
日本語学校
日本語学校の留学生が「技術・人文知識・国際業務」に変更するには、原則として海外での大学を卒業し、学士号を取る必要があります。ただし、海外の教育機関によっては、大学と名乗っていても学士号を授与していない場合があるため、注意が必要です。
ただし、実務経験があれば学歴がなくてもビザ取得が可能です。技術系やエンジニア系職種、人文知識系の職種では10年以上の実務経験が、国際業務関連職(翻訳、通訳、語学教師など)では3年以上の実務経験があれば、学歴に関わらず条件を満たせます。
実務経験は正社員・契約社員としての経験のみが対象で、アルバイトやパートの経験は含まれません。就きたい仕事に必要な学歴、もしくは実務経験を満たしているか確認しましょう。
専門学校
日本国内の専門学校卒業生、もしくは卒業見込みの人のみ「技術・人文知識・国際業務」に切り替えることが可能です。海外の専門学校卒業ではこの学歴要件を満たせません。専門士または高度専門士の称号の取得が求められ、専門学校で学んだ科目と就労予定の業務との関連性が厳しく評価されます。
大学
大学の卒業生、もしくは卒業見込みの人も「技術・人文知識・国際業務」 に切り替えることができます。日本国内の大学や短期大学、海外の大学から学士号や準学士号を付与されていることが要件となります。大学卒業者は、大学で専攻した科目と就労予定の業務内容の関連性は、専門学校卒業生に比べ柔軟に判断される傾向にあります。大学は専門的な能力に加え、広い知識を授けることを目的としているためです。
変更手続きに必要な書類
留学生が「技術・人文知識・国際業務」に変更する際に、以下の書類が必要です。
申請者が準備する書類
申請者が準備する書類 | 日本語学校 | 専門学校 | 大学 |
在留資格変更許可申請書 | 〇 | 〇 | 〇 |
証明写真1枚 | 〇 | 〇 | 〇 |
パスポート原本 | 〇 | 〇 | 〇 |
在留カード原本 | 〇 | 〇 | 〇 |
履歴書 | 〇 | 〇 | 〇 |
国内外の大学卒業証明書 | 〇 | 〇 | |
日本の専門学校卒業証明書 | 〇 | ||
日本語学校卒業証明書 | 〇 | ||
成績証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
出席率証明書 | 〇 | ||
手数料:4000円の収入印紙 | 〇 | 〇 | 〇 |
実務経験を証明する書類 | 〇 (学士号を持っていない場合) |
受け入れ企業が準備する書類
・雇用契約書
・登記事項証明書
・直近1年分の決算書(BS・PL)
・会社概要書
・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
・雇用理由書
上記が最低限必要な書類です。会社の状況や留学生自身の状況によって必要な書類が増えることもあります。詳しくは、「出入国在留管理庁 在留資格『技術・人文知識・国際業務』」から確認してください。
留学ビザから特定技能への切り替え
「技術・人文知識・国際業務」ビザとは異なり、「特定技能」ビザへの切り替えは比較的容易です。留学生は日本語能力試験と特定技能試験に両方合格している必要があります。具体的には、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テストA2以上の試験に合格し、さらに就業を希望する分野で実施されている特定技能試験にも合格する必要があります。現在、特定技能試験は12分野で提供されています。
特定技能への切り替えプロセスは、技能試験と日本語試験の合格後、就業先を見つけ、特定技能の雇用契約を結ぶことから始まります。留学ビザから特定技能ビザへの切り替えには、1年以内に健康診断を受けることが必要です。次に、就職先の企業や登録支援機関から契約内容や手続きの詳細についての説明を受けた後、必要書類を揃えて最寄りの出入国管理局にて在留資格の変更を申請します。これらのステップを完了すると、特定技能ビザを取得し、日本の企業に就職することが可能となります。
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まとめ
本記事では、留学ビザから就労ビザへの変更手続きを代表的な「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」を例に挙げて解説しました。ビザの種類によって取得要件や難易度が変わりますが、切り替えプロセスには試験合格や就職活動、書類準備、申請など多くの手続きが必要です。不安や疑問がある場合は、在留資格に詳しい行政書士や出入国管理局への相談をおすすめします。