今回は日本の環境問題についてお話します。日本は経済の成長とともに、さまざまな環境問題と向き合ってきました。今、経済成長するベトナムにおいて、参考になることがあるかもしれませんので、この記事を読んで、ベトナムの環境について考えてください。
もったいない!
みなさんは、この「もったいない」という日本語を知っていますか。「もったいない」は、日本で昔からあることばです。この言葉は、2004年にノーベル平和賞を受賞した、ケニア人のワンガリ・マータイさんという人が、世界に広めました。
マータイさんは、母国ケニアで生まれ、海外留学で環境について学び、環境を守るため、木を植える「植林活動」をしていた人です。マータイさんが作った団体には10万人が参加し、5,000万本以上の木を植えました。
そのマータイさんは、日本に来たとき、この「もったいない」ということばに、強く感動したそうです。そして「MOTTAINAI」ということばを、世界共通語にしたい、と言いました。「もったいない」という言葉は、他の国のことばで、説明しにくい、日本の文化だからです。
日本人である私は、小さいころ、先生や家族から「もったいない!まだ使えるよ!」「もったいない!まだ食べられるよ!」と、たくさん注意されました。
たとえば、みなさん。下の写真のチューブは、もう使えないと思いますか?
このチューブタイプは、あるやり方で、まだまだ中身が出てきます。
- チューブの中に空気をたくさん入れ、ふくらませながらキャップを閉める
- キャップの反対側、チューブの端っこを持ちながら強く振る
みなさんも一度試してください。このままチューブを捨ててしまったら「もったいない」ですね。
別記事日本のトイレについてでも紹介しましたが、日本文化の「あらゆるものに神様がいる」という考え方は、「すぐに捨てるのではなく、最後まで大事に使う」という思いに、つながっているのだと考えます。
環境問題について、世界では”3R”(Reduce,Reuse,Recycle)
- Reduce:ゴミを減らす
- Reuse:再利用する
- Recycle:再資源化する
というキーワードが有名ですよね。
マータイさんは、3Rに加えて、「環境に対するリスペクト(“R”espect)」を表すことばが「もったいない」だと世界に広めました。
日本にあった「ゴミ問題」
そんな日本も、これまでたくさんの環境問題と戦ってきました。別記事「東京オリンピックがやってくる」でもお話しましたが、日本は経済成長の中で、街中にゴミがあふれ、川にゴミを捨てる人が増え、きれいなところではありませんでした。
政府の取り組み
東京都は、「汚い東京では、 世界に対し日本の印象が良くない」と考え、「そうじの日」「そうじ運動」を広めて、国民に「街をきれいにすること」をお願いしました。「ゴミはゴミ箱に捨てる」「道に痰を吐かない」など、とにかくルールをたくさん作りました。
救世主!「ポリバケツ」
それまでの日本のゴミ箱は、家の外、道に作られたコンクリートの箱などがメインでした。蓋が無いので、ゴミは、くさいニオイを出していました。ここで「ポリバケツ」が登場し、街は一気にきれいになりました。
ポリバケツは、軽くて持ちやすく、洗うことができるものです。これは、アメリカのニューヨークで使われていたゴミ箱を、日本が参考にして作りました。ポリバケツは、あっという間に日本中に広まり、今の日本でも、使われています。
これにはじまり、日本ではゴミを分けるルールが厳しくなり、「もえるゴミ」「もえないゴミ」「ペットボトル・缶」「リサイクルゴミ」を分けて出すことが、今の「あたりまえ」になっています。
健康被害
日本の環境問題は、ゴミだけではありません。人々の身体に健康被害を与えたケースは、たくさんありました。
足尾銅山鉱毒事件(1891年)
足尾銅山で銅を作るときに出た「鉱毒」が川に流れ、魚が死に、近くの田畑の食べもの、植物が育たなくなった。日本初の公害として知られる。
イタイイタイ病(1955年)
イタイイタイ病は、鉱山から出た汚い廃水が川に流れ、その水で出来たお米などを食べた人の身体に被害があった。病気にかかると「イタイ!」と叫ぶことから名前がついた。
水俣(みなまた)病(1956年)
水俣病は、工場から出た「廃水」に含まれた「水銀」が海に流れ、その海の魚を食べた人の身体に被害があった。今も、この病気の患者がいる。
四日市ぜんそく(1961年)
四日市ぜんそくとは、工場から出た、空気中の「大気汚染物質」により、市民の間で呼吸にかかわる病気(せき、ぜんそく等)が流行し、人々の健康被害を与えた。
こうした「公害」を通して、日本では環境に関するさまざまな法律ができ、「環境省」が設立され、日本の環境を守る取り組みがされてきました。
最近の日本では、2011年に起きた「東日本大震災」による、原子力発電所の事故がこの「公害」にあたります。
「いま」ある環境問題
暑すぎる!日本
日本には、四季がありますが、この「春夏秋冬」のバランスが変わってきている、という話があります。これまで日本は、
- 春(3~5月)
- 夏(6~8月)
- 秋(9月~11月)
- 冬(12月~2月)
というシーズンの流れが一般的でしたが、夏や冬が長かったり、過ごしやすい春や秋が短くなったりしているため、環境問題が影響しているといわれています。また日本では気温が40度を超える日が続き、以前よりも暑くなったという人が多いです。
日本は環境問題を国内だけで見る時代は終わり、今は世界の環境問題として、さまざまな問題を取り上げています。それは、たとえば海に捨てられた「プラスチックごみ」の問題であったり、環境を破壊する「汚染物質」のことです。
取り組み
こうした環境問題に、日本では昔から日本政府や、自治体が声をあげています。たとえば、その取り組みは、私たちの生活のなかでも行うことができます。たとえば次のようなものです。
- 排気ガスの出る車ではなく、自転車や電車を使って移動する
- 買いもののときは、エコバッグを持ってビニール袋を使わない
- お風呂に入った後の水で、洗濯をする
- エアコンの温度を「エコモード」に設定する
小さいことからでも、全員が協力すれば、大きな結果がうまれます。あなたも明日から、はじめてみましょう。
問題と向き合う「技術」
ペットボトル
日本では、ペットボトルのリサイクルが昔から大事にされています。捨てるときにはキャップを外し、ラベルをはがして、ペットボトル専用のゴミ袋に捨てます。そうすることで、リサイクルがしやすくなるのです。集められたペットボトルは細かくなり、またペットボトルとして使われたり、入れものや、服になったりします。
水
日本は世界でも数少ない、水道水が飲める国です。この技術は世界に発信されていて、上下水処理に活かされています。日本では、こうした「水処理」の施設を見学するツアーがあり、地域によっては、学校教育のひとつとして教わります。
電気
日本の電気は、火力、水力、原子力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など) から出来ています。「太陽光発電システム」は各家庭の家に取り付けられるなど、日本国内で広がっています。
また、火山がたくさんある日本では、「地熱」、つまり地下の熱を利用して、発電する仕組みを開発しています。これには、大きなコストがかかるため、まだまだ日本には少ないですが、環境にやさしい技術として、2011年原子力発電所事故のあとから、注目されています。
この他にも、私たちの生活から出るゴミを使って、電気を作る技術(バイオマス)など、多くの科学者たちが世界中で研究をしています。
魔法の粉「バクチャー」
先日日本のテレビ番組を見ていたら、「日本のある会社が、ベトナムのハロン湾の水をキレイにしている」という話を聞きました。「バクチャー」という粉を使うことで、ハロン湾の汚かった水が、きれいになっていることが分かりました。こうした日本の技術が、ベトナムの環境問題の役に立っていることは、とてもうれしいです。
参考:テレビ東京「未来世紀ジパング」日本発”魔法の粉”が世界遺産の海を救う!
まとめ
いかがだったでしょうか。これまでの日本の環境問題と、それを解決する技術や、取り組みを知ってもらい、ベトナムの環境問題を、いっしょに考えるきっかけにしてほしいと思います。
私はベトナムに生活していて、「ゴミの分別」がないことに驚きました。たとえ、今はする必要が無くても、今のうちから「分別」をするルールを作ることで、ゴミ処理技術が発展した時に活かせると思います。まずは、ペットボトルのゴミを分けることから、はじめませんか?
こうした取り組みは、未来のベトナムの環境を守る「きっかけ」になると思います。「もったいない!」運動と一緒に、何かベトナムの環境について考える機会を作りたいと考えます。協力してくれる人は、ぜひ教えてください。