日本のビジネスマナー「電話応対」応用編

日本のビジネスマナー「電話応対」応用編

jNaviでご紹介する日本のビジネスに関する記事、 今回は「電話応対おうたい」の仕方について、です。

前回の別記事:日本のビジネスマナー「電話応対」基本編に引き続き、「電話応対」の応用編を紹介します。応用編では、主に「電話応対」に関する失敗談やケーススタディをもとに、アドバイスをしたいと思います。

電話応対の失敗談

保留するはずが、電話を切ってしまった。

あなた「鈴木ですね、おつなぎしますので、少々お待ちください。」(保留ボタンを押す)
電話「ガチャ・・ツー、ツー(電話が切れる音)」

急いで保留ボタンを押して、受話器を置いてしまい、電話が切れてしまう・・・ということはよく発生することですので、気を付けましょう。

基本編でもお話しましたが、保留ボタンは、他の人が利用している可能性を気にかけるべきです。保留ボタンを押したあとは、音楽か、一定のリズム(ピー、ピー・・という音)で音が鳴り続けますので、その音を確認してから受話器を置きます。

もし、電話を切ってしまった場合は、すぐに相手にかけ直すか、番号が分からない場合は電話を待ち、「さきほどは申し訳ございませんでした。」と謝罪してください。

「保留」の番号を誤って押して/伝えてしまった。

新入社員Aさん「(取引先)〇〇様、鈴木につなぎますのでお待ちください。」(保留①を押す)
新入社員Bさん「(社内)△△支店長、鈴木部長ですね、お待ちください。」(保留②を押す)

電話がたくさん鳴る会社では、保留(もしくは「内線」と書いてある)番号が、4つ~5つほどあります。一度に数件の電話が保留状態になりますので、自分が保留にした番号を間違えずに伝えるようにしましょう。

これは本当にある話で、Aさんが取引先の大切なお客様の電話を保留①にし、Bさんが、部長と仲の良い△△支店長の電話を保留②にしました。その後Bさんが「部長、保留①に支店長から電話です」と間違えて伝えました。

すると部長は仲の良い支店長と飲みに行ったばかりなので、保留①を押し、
おっす、お疲れ様です~、この間はどうも~ごちそうさま~」と話すと、
保留①で待っていたお客様だと気づき、謝罪をした、ということがあります。

相手を保留のまま5分以上待たせてしまった。

電話の相手「鈴木さん、いらっしゃいますか?」
あなた「鈴木ですね、少々お待ちください。」
電話の相手「(保留中)・・・・・・・・・・・・・・・・・」

電話を保留にし、電話の相手が話したい上司・同僚を探しにいくことに精一杯になりすぎて、保留中であることを忘れてしまう、ということが新入社員には多いです。

また、保留にしたあとに、急用の仕事が上司から指示され、保留にしていることを忘れる、ということは信じられないかもしれないですが、実際にあります。

この対策として、保留中の際には受話器を電話機に戻さず、机の上に置きっぱなしにしておくことです。(下の写真、右のようにします。)

右のように、受話器を机の上に置けば、「電話対応中」であることを自分にリマインドできる

電話があったことを伝言するのを忘れてしまった。

電話の相手「鈴木さん、いらっしゃいますか?」
あなた「鈴木はただいま席を外しております」
電話の相手「そしたら、またあとでかけ直します。」

電話の相手から、「あとでまたかけ直します」と言われたので、鈴木さんへは何も伝えなくて良い、という訳ではありません。もし電話の相手が鈴木さんの上司や大切な取引先で合った場合には、鈴木さんは「自分から折り返し電話する」ことを希望する可能性があります。

鈴木さんに直接「電話があったこと」を伝えるか、席を外している場合などは、鈴木さんの机の上に、電話メモを置いておくと良いでしょう。(電話メモのサンプルは別記事: 日本のビジネスマナー「電話応対」基本編 で紹介しています。)

このあたりのルールは会社や組織によって違うので、入社後、先輩社員からしっかり習うようにしてください。(例:机の上に資料がたくさんある場合、電話メモは目立たないので、パソコンのキーボードに差す。)

「二日酔いでお休みしています」と正直な理由を伝えてしまった。

電話の相手「鈴木さん、いらっしゃいますか?」
あなた「鈴木は本日遅刻しております。」
電話の相手「遅刻?鈴木さん、どうかしたんですか?」

あなた「昨晩、パーティーがあって、お酒を飲み過ぎたんです。二日酔いですね。」

仕事は「真面目で」「正直」であるべきですが、何でも全て「正直」に話すことが良いこと、とは限りません。こうした場合は、

あなた「鈴木は私用しようにより、出社が遅れております。」

という程度の説明で構いません。

本人に確認を取らずに、個人情報を伝えてしまった。

また、本人のプライバシーにかかわることは特に注意が必要です。

  • ご家族のお葬式のため休暇を取っていること。
  • 夏休みを利用して、海外旅行に行っていること。
  • 奥さんや子どもが体調を崩していて、面倒をみるため休暇を取っていること。
  • ケガで入院していて、入院先の病院名を教えること。
  • 転職後の会社名を伝えること。(※)

「こっちは忙しいのに何で旅行に行っているんだ!」とクレームする取引先がいたり、
お見舞いに行くから病院名を教えて!」と、これは、病院名を伝えても良いことだと思うかもしれませんが、入院している本人がお客様に気を使ってしまい、かえって迷惑になってしまうことが考えられます。

こうした情報は、特に社外の人には伝えてはいけないことですので、気を付けてください。こうした理由を全てカバーできるのが、「私用により、お休みしている」という、ことばです。(※)ただし、「退職者」の場合を除く

退職した社員宛ての電話で、「やめました」と伝えた。

(※)で説明した、「退職した社員宛て」の電話は、あなたが対応する可能性があるはずです。そこで「やめました」という日本語は、子どもっぽい表現なので不適切です。「退職」ということばを使います。なお、このときには、

あなた「〇〇は先月退職をしております。ご挨拶ができておらず、失礼しました。」

と説明をしましょう。(本来は退職時に社内外の人に「退職のあいさつ」をするのがビジネスマナーですが、全ての人にできないこともあります。)

このあとに、電話の相手から、

  • 「え、どこに転職したんですか」
  • 「え、なんで辞めてしまったんですか」

などと聞かれても、

あなた「”一身上いっしんじょうの都合”と、聞いております。」

と短く答えましょう。退職理由を詳しく伝える必要はありません。

電話番号を聞き忘れた。

せっかくすばらしい電話応対ができても、折り返し電話する必要があるときに、電話番号が分からないと、相手からの連絡を待つのみ、となります。

多くの場合、社内の上司や同僚と電話の相手は以前からの知り合いであることが多いですが、新規の問い合わせなどにおいては、忘れずに「会社名」「名前」「電話番号」を聞くようにしましょう。

電話機に電話番号が表示される場合には、電話の最中にメモを取っておくこともおすすめします。

自分のメモが読めない。

ふだんから字が汚い人は、特に注意して下さい。電話メモを置いておいても、「これなんて書いているんですか?」と聞かれてしまうことがあるかもしれません。

また、電話に緊張しすぎて、自分が書いた文字が読めないこともあります。完ぺきな文章を作る必要はないので、キーワードだけ抜き出す練習をしましょう。

下の電話内容が来たら、あなたなら、どのように伝言しますか?

電話の相手「鈴木さんに至急伝言してください。先週お願いした部品の発注の件ですが、ニャットバン社から、届いていないという連絡があったので、すぐに発注履歴を確認してください。もし発注できていない場合は、お急ぎ宅急便で部品を輸送するので、弊社の山田に電話してください。」

メモの参考例:

左は悪い例 / 右は良い例
  • 大事な箇所は赤字で書く(例:「至急」など)
  • 至急の際は、電話メモを渡すだけでなく、直接伝言しにいく。
  • メモで伝えきれない点は、口頭で直接説明する。
  • 社内の人に対して、「役職」のある人には「さま」ではなく「名前⁺役職名」
  • 電話の相手の「会社名」、「お名前」をしっかり書く。
  • 折り返し宛ての「名前」、「電話番号」はしっかり書く。
  • 用件をキーワードで伝える。例:「部品発注」「ニャットバン社」「リレキ」「TEL」
  • 履歴→「リレキ」電話→「TEL」など、画数が多い文字は省略すると、電話メモを取りやすい。

舌打ちが電話の相手に聞こえてしまった。

あなた「お電話ありがとうございます。〇〇社のグエンです。」
電話の相手「・・・・・(無言)」
あなた「電波が悪いようなので、一度切らせていただきます。」
電話の音「プルルル・・📞」
あなた「お電話ありがとうございます。〇〇社のグエンです。」
電話の相手「・・・・・(無言)」
あなた「ちっ(舌打ち)」

私は仕事やプライベートにおいて、ベトナムの人の「舌打ち」が気になることがあります。これは、自然な感情表現で、悪気のないものなのだと思いますが、日本のビジネスシーンで、舌打ちが聞こえた瞬間、これは、大きな問題になります。

電話口などで、電波不良などで、つながらないことにイライラして「舌打ち」することもあるかもしれませんが、これは電話の相手にとっては、自分自身に対する「いらだち」「反抗」に捉われてしまうかもしれません。

また、電話に出ても、相手の声が聞こえず、その後何度も電話を受けたり、切ったりすることもあるかもしれません。こうした場合、あなたが聞こえていなくても、相手はあなたの声が聞こえていることがあります。(日本では携帯電話からの電話で頻繁に、これが発生します。)

電話の声が聞こえないときは、「電波が悪いようなので、一度切らせていただきます。」と言ってから、電話を切るようにしましょう。

ビジネスシーンにおいては、どんなときでも「舌打ち」をしないように気を付けましょう。

まとめ

何か電話応対で迷ったりしたら、

①電話の相手に「お待ちください」と伝える
②保留をして、社内の先輩に相談

この流れで対応しましょう。

基本のマナーについては、こちら日本のビジネスマナー「電話応対」基本編 を読んでください。